順番待ちシステム国内マーケットを勢力図で俯瞰する

飲食店・理美容施設・商業施設・自治体窓口など限られたスペースで混雑が発生しやすく、順番待ちシステムの需要の高いとされる業界における順番待ちシステムマーケットシェアとサービス(機能・保守サポート)にフォーカスした業界勢力図をまとめました。

長期利用をメインとし、コストだけに依存せずサービス面(機能性・保守サポート品質)をバランス良く検討する必要のある業種業態に参考となる俯瞰図です。

国内において市場シェアが一定基準に満たない、または事例がなく情報量の乏しいシステムついては掲出対象から除外しています。

あくまでも定量調査+定性分析によるイメージ配置となりますのでご了承下さい。

順番待ちシステム国内勢力図(外食・理美容・自治体・商業施設)

市場は大手2社牽引。参入企業増加傾向も数年スパンで生き残るのは一部のみか。標準技術領域における知的財産権を保持する2社が今後も市場をリードする構図に。

アナリスト

勢力図は2021年時点のものとなり、その後の各社シェアには小さな変化はあるものと思いますが、分析によれば上位層においては直近5年程は大きなシェアの変化は見られておりません。

一方でそれ以外の中位~下位においては入れ替わりが激しく、その他スタートアップやベンチャー企業の参入に活発な動きが見られました。ただし、それらの層は事業開始から数年も経たずサービス停止や事業再編により縮小などと多くの参入企業が短期間で淘汰されていきました。

それらの変遷を鑑みるに、これらの順番待ちシステム事業継続において、システムの安定稼働とサービス品質、サポートレベルを継続的に維持していくことがいかに難しいかを物語っています。

アナリスト

直近10年程の業界動向をWEBで調べてみると、順番待ちシステム市場のパイオニアとなるEPARKが2000年代初期から市場を創造し拡大、牽引してきました。その後、Airウェイト(リクルート)が2015年サービスをリリースし2017年頃より中小規模の飲食店を中心に市場を拡大してきたようです。それから数年はその2社の独壇場で市場をほぼ分け合いながら市場は徐々に拡大してきました。

2020年に入り事態は急変します。2020年春、新型コロナウィルスのパンデミックにより飲食店他各施設における3密対策機器として業界問わず注目を集め、市場が急拡大しました。

日本フードサービス協会が2020年5月に策定した「新型コロナウィルス対策における事業継続ガイドライン」によれば入店時のルールとして、混雑を避け、行列を作らない順番待ち対策を採り入れるなどの内容が明記され、非対面受付関連機器が補助金に認定されるなど社会背景も市場を拡大させる要因として大きな役割を果たしました。

更に2020年秋頃から政府主導で始まった飲食店向けの需要喚起施策「Go To Eatキャンペーン」において、大手回転寿司チェーンや大手焼肉チェーン、ファミレスチェーンなど多くの有名ブランドが順番待ちシステムを使いキャンペーンに参加したことが順番待ちシステムを広く国民に認知させるきっかけにもなりましたね。

アナリスト

それらの需要増、認知度アップを背景に2020年後半からは、再び順番待ちシステムの市場参入を開始する新興企業が増加する事となりました。

スタートアップベンチャーのみならず異業種からも続々と参入が見られています。

ただ、分析によると、その動きは今後も数年は続くと見られていますが、一方で携帯やその他IT関連業界のようにトレンドによって市場が急拡大した業界の歴史を鑑みるに、一時的には短期的視点で参入を図る新興プレイヤーが増えるものの、数年スパンで見れば、知的財産権を先に保持し市場を抑えた一部の企業により業界は統合再編され、それらの対策に乗り遅れた企業群は整理淘汰されていくものと考えます。

我々の分析によれば一部の企業においては既に先を見据えそれらの対策に先手を打ち、足場を固めているのが伺えます。やはり最終的には先見性と資本力を兼ね備えた企業のみが市場に残っていくのものと考えています。

特に2017年以降で順番待ち市場に参入した中小企業群においは同市場における標準特許領域を既に大量に先行企業数社に抑えられていることから、知的財産権の保有は現実的には不可能であり、逆に先行する企業から権利侵害を訴えられるリスクが極めて高い状況にあると捉えられます。

ただ如何せんそれらのリスクに参入企業側が全く気付いていない。。。

大手2社が本気になったときには企業存続が危ぶまれるべきかなりの痛手を負うことが明らかと見られ、どう見積もっても順番待ち市場において得られる限定的なリターンとその際に負うべきリスクのバランスが悪すぎると言えます。

先日とある企業の社長が不正競争防止法で刑事罰を受けましたが、外食産業における知的財産権しかり、法的なリスクに対する考えが海外に比べ圧倒的に低いというのが伺えます。

それらの企業各社はベンチャーや大手企業は少なく、自社に知的財産部門がないことも影響すると見られており、参入時に知的財産分野での入念な市場調査を一切していない可能性が非常に高いと見られます。

海外であればパテント・トロールのよい餌食になっている可能性が高い。これからは国内においても痛い目を見て学ぶ機会が増えてくるものと想定されます。

いろんな意味で刺激的な業界であり、今後も様々な観点でこれらの動向には注目していきたいと思います。

参照文献

一般社団法人 日本フードサービス協会 一般社団法人 全国生活衛生同業組合中央会

新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針(改正)に基づく 外食業の事業継続のためのガイドライン

入店時

• 順番待ちが店外に及ぶ場合は、従業員が間隔を保つように誘導するか、または整理券の発行等により行列を作らない方法を工夫する。