順番待ち(ウェイティング)システム関連ニュースまとめ2022
最近の順番待ちシステム・ウェイトリスト・ウェイティング(整理券発券)システム関連のニュースをまとめてみたが、2020年の新型コロナ感染症のパンデミック発生後は順番待ちシステムに関連するニュースは増加傾向のようである。
2020年~2022年にかけ順番待ちシステム業界では様々なニュースがリリースされた。それらを見ながらトレンドとリスク、機会について独自の見解を踏まえながら見ていきたいと思う。
昨今特許庁が国内の知財財産権侵害に対するパトロールを強化し警戒を強めているように、順番待ちシステム領域における知的財産権侵害リスクを孕む類似製品が市場に多数出回っていると専門家の中でも注目されている。今後更にパテントトロールのターゲットとなり得る企業も含め注視が必要である。
特許庁も中国、韓国やアジア新興国各国における模倣品の規制強化だけでなく国内での類似品取締強化に乗り出す動きもあり、安易な市場への参入やそれら模倣品を製造する企業への出資・風評等による株価への影響等大きな損失を被る企業が増加すると予想されている。様々な意味合いで刺激的且つ今、注目されている業界の1つであるといえよう。
無料だから知的財産を模倣して良いだろう、バレなければ良いだろうという数十年前のアジア新興国的な安易な発想を持つベンチャー企業も散見され始めている。海外ならパテントロールの恰好の餌食、、、ベンチャーであれ公開されている特許庁HPで国内外の知的財産権を調査してから市場には参入すべきである。知らなかったでは済まされないという感覚を国内ベンチャー企業にも持ってほしい。リリースを出すということは市場への投入日を公開証明し履歴を残してしまう(それは消せない)ということもあるということも同時に知っておくべきである。また、そういった企業への投資を安易に行ってしまう大手企業が日本国内にはまだ多いように見受けられる。投資判断を行う部門の担当者や決済者がいかにしてそういった知的財産権の調査が甘いか、それによりどれだけの甚大な損害を被るリスクが潜んでいるのかというリスク感度が大きく欠落していると言わざるを得ない。
それらの損賠賠償額や社会的信用の失墜等は出資額の数倍にも膨れ上がるということを国内の投資部門担当者には最低限理解し出資を検討すべきである。
痛ましい事件が起こってしまったが、クリニックは常に20人以上の順番待ちが発生し廊下にも椅子を置くほど混雑していたという。順番待ちシステムを導入していたとしたらクリニックの外で待っている方含め被害を最小限にできたのかもしれない。受付や入り口周辺は病院であれ、飲食店であれ混雑させるべきではない。施設側もそういったリスクがあるということを考える機会にもなるのではないだろうか。
順番待ちにはトラブルもつきものである。待っている場所や混雑状況によっては人を苛つかせたり、普段では温厚な方でもカッとなってしまうことが考えられる。順番待ちシステムを導入していれば客は離れた場所や自分の車などでも待つことができるためストレスも発生しづらく、そういったイライラも最小限に抑えることにもつながるのであろう。こういった事件も方法によっては防げたことなのかもしれない。
~抜粋~焼き肉店を利用する際、便利だと思うシステムを聞いた。すると、「セルフオーダー」(55%)が1位で、2位は「キャッシュレス決済」(22%)、3位は「順番待ちシステム」(10%)だった。
とあるようにコロナ禍でも業績好調な焼き肉業界を牽引しているシステムの1つが順番待ちシステムである。コロナ中も行列させない消費者に安心を与える焼肉店の救世主として大活躍している。
順番待ち業界のパイオニアであるEPARKは飲食以外でも他業種に対応して機能をリリースし適応しているのがよく分かる。同分野の特許保有も国内ではトップクラスとなり、特許領域の専門家からも高い評価を得ていることがわかる。
特許分析を行うパテント・リザルト社の独自調査によれば【ネット予約システム】特許総合力トップ3は楽天、リクルート、EPARKという。順番待ち業界の両巨塔となるEPARK、リクルートの2社は国内大手富士通を抑えて予約システム領域での特許戦略が業界内外に高く評価されているようである。両社知財部には相当な人材が揃っているのであろう。
2022年ニュース
順番待ちシステム業界の最先端を行く「くら寿司」のウェイティングシステム。とある順番待ちシステム企業の最先端システムをベースに技術開発がなされていることはあまり知られていない。知財の専門家が外部から見ればすぐに分かることであるが同システムにはそのメーカーが保有する数百に上る特許技術が使用されている。くら寿司は同メーカーから特許技術の盛り込まれた製品を購入する立場にあることから特許は問題なく使用することが可能である。まさに他では真似できないシステムである。くら寿司は事業説明会でも自社開発する領域とメーカーと協業して補完する領域を明確に分けており、役割分担をしていることで自社のリソースを本来回転寿司企業として集中すべき領域に特化できているのである。自社ですべてを抱え込もうとしないそのビジネスモデルが秀逸である。
仮想空間に待合室を設置するという斬新であり独創的なアイデアである。
システム障害が発生すると大きな順番待ちによる混雑が逆に発生してしまうことがある。その良い一例となった。
ときに大手企業が特許侵害を知らずに模倣してしまう場合がある。テストであっても特許を侵害して行ってはならないことは明らかであるが事前調査を怠ると後々痛いしっぺ返しを負うため、くれぐれも注意しなければならない。
各種機器情報をリリースしている企業名で特許庁公式サイトでの順番待ちシステム関連の特許、出願状況が確認できなかった企業も多い、、、それらの製品には業界大手のE●●●●社「ファ●●」!?やR●●●●社「Air●●●●」製品各種との類似性を懸念する専門家も(比較対象2社は多数の特許保有出願を確認済)、、、ネーミング(商標)・仕様・デザイン(意匠)・機能(特許)概要共に類似性観点で更なる追加調査が必要だが、これらの数機種においては国内大手企業が一部販売または導入に関与している製品もあるとも見られており、導入企業側への風評や海外パテント・トロール企業等の餌食となる可能性なども危惧される。。。。無知の脅威の典型的な事例であると言える。
これらもその1つであると見られる。
また、ブレイブテクノロジー社が2020年にリリースしている「LINEで順番待ち」の類似製品と見られる製品も地方で確認された。商標や特許がグレーと言える。詳しい機能は実際にインストールし調査を行う必要はあるが「日時指定順番待ち」などが機能として含まれている場合は注意が必要となる。知らずに大きな損害を被るリスクがある一例であろう。
これらの製品も海外であればすぐにパテント・トロールらの良い餌食になっているはずである。
大手企業ともなれば模倣品対策室など専門部署によって、自社が保有する知的財産権の侵害調査とパトロールを独自開発のクローラーや目視により定期的に実施するなどし類似製品情報をリアルタイムで収集している。首都圏から離れた特定地域での販売であれ既にそれらには認知され、太らせるまで敢えて寝かせている可能性も否めない。ユ●ク●裁判では製品導入側の自社開発の是非が争点となっている。真実は違ったとしても、製品を開発するメーカーの取引先企業として商談やテスト導入等で技術製品情報を容易に入手できる優位的な立場や環境にあると客観的には見られる側面は、裁判では明らかに自社開発側が不利であることはいうまでもない。特に導入側企業が自社開発を行う際には特許情報を事前に入念なパテントチェックを行い、特に取引先や過去に接点のあったメーカーの技術だけでも入念に知的財産権情報を調査した上で製品開発を進める必要がある。
そうしないと開発費よりも何十倍もの高い代償を支払わなければならなくなるのである。その額はリリースから訴えを起こされるまでの期間がながければながいほど膨れ上がる。。その恐ろしさをまだ知らない企業が日本国内には多すぎる。
知的財産権侵害はときに大手企業へも警笛を鳴らす。大手企業であっても絶対に(中小企業の)特許を侵害してはならないということが明らかになった裁判が2021年末終結した。
知財業界内では大きな波紋を生んだ「ユニクロ・アスタリスク裁判」である。結果的に和解が成立したが、特許権者となったライセンス会社がユニクロに請求した損害賠償額は最終的に約20億円にも上っていたことも明らかとなった。特許を侵害してしまったことは取り返しがつかないがそれにより社会的信用と合わせ、開発費用の何十倍以上もの損失を被る結果になるとはユニクロ側の開発担当者は思いもしなかったであろう。社内での立場や信用すら失ってしまたに違いない。ある意味、クライアントとして優位的立場の濫用とも言うべき一瞬の奢りがあったのかもしれない。和解の全容は明らかにはなってはいないがユニクロの担当者自体も自社で作ってしまえばコストは下がるであろうといった安易な考えや知的財産権領域への事前調査の甘さが大きな代償を支払う結果を招いてしまったということは言うまでもない。
本裁判の結審前後では特許を保有していたアスタリスク社は上場を果たすこととなり、明暗が大きく分かれる結果となった。
この判例は特許がいかに重要であったを物語っているが、今後の国内での特許裁判を左右するといっても過言ではない。類似製品が既に市場にあり、既に特許化されているという事を知っていたかは関係なく、「知らなかった」では済まされないという当たり前の論理がある意味裁判によって証明された。
判例が明確に出たことにより、今後特許保有企業が積極的に市場内に氾濫する類似製品の対策に乗り出す動きが加速していくことが予想される。自社製品に実装されている機能(特許)、ブランド名(商標)、デザイン、外観等(意匠)の調査を早急に行いリスクヘッジをすすめる企業も増えていくであろう。
製品を採用・導入する側の企業としても対岸の火事ではない。知らなかった、伝えられなかったでは済まされないのである。知的財産権を侵害している製品を導入した担当者や企業は社会信用失墜や社内での立場を即失う事態に発展する恐れがあるという点と、自社開発の際には特に注意して慎重に臨むべきであろう(過去に導入した製品やツールの特許は最低限洗い直す必要がある)。
大手企業であっても特許を保有せずリリースしている例が稀にある。順番待ち領域の特許は既に先行技術が特許庁に登録されており大手であっても後発で取得できる領域が限定的であることが調査により分かっている。導入企業側は大手、中小だけで採用判断をする前に特許保有を入念に調査し自社で見極める術が今後求められる。海外ではあたりまえのことではあるが、国内においても自社へのシステム導入前にはパテントチェックを行うフローがスタンダードで組み込まれているが、自社を守る上で国内においても今後必須のフローになってくるものと想定される。
これらの企業も順番待ち関連の特許は確認されていない。担当者や経営者はその事実を把握しているのであろうか。心配になる。
ベンチャー企業に投資する側もその企業が特許をしっかりと保持しているのか、他社特許の侵害リスクや損害賠償リスクの有無は入念に調査を行うことは必須であるが、実は国内の投資環境においてパテントチェックは優先度が低いと知的財産権分野の専門家からは見られている。特許裁判の事例が少ないということであろうが、環境は確実に変わりつつある。投資先の特許侵害は投資側にとっても大きな損害や風評被害のリスクにも繋がる。投資する側が大手企業であればあるほどその風評被害を含めたリスク度合いや損失のインパクトは大きい。
メーカーが自社でリリースする情報だけでなく第三者機関となる業界関連メディアなどの情報も参考にしながら情報の精査を行っていくのも1つの方法である。
これらの企業にも特許は確認されていないと見られるが、展示会などで大々的にリリースをしてしまっているのはある意味大きなリスクを自らが発信してしまっているとも言える。
実際に店舗でどのように使われているかはメディアの記事などが参考になる場合がある。
2021年には日本経済新聞が順番待ちシステムの特集記事を書いている。日経としてもこれらの記事に掲載されている企業には特許をすでに保持していることを確認し取材をしているものと見られる。少なくともリクルート、EPARKの2社はこの点でも知的財産権侵害リスクは限りなく低いと言えるのではないだろうか(VACAN社の特許については不明:出願済だが公開前であるとも考えられる)。