なぜ今、順番待ちシステムが業界内外で注目を集めているのか。導入施設はどういった目的やメリットがあり、デメリットは何なのか。アナリストの視点でマーケット分析を行う過程で得た情報を元にメリットとデメリットを考えてみた。システム導入時の比較検討の際、参考になればと思う。

なぜ今、順番待ちシステムを導入を

希望する施設が増えているのか?

順番待ち受付システムのメリットとは?

順番待ちシステムを導入するメリットについて、既に導入している施設の担当者に聞いてみたところ、共通している意見としては、入り口付近での混雑が大幅に解消された点を挙げていたね。最近では人手不足の施設が非常に多いことで、今までは店頭の受付に張り付いていたアルバイトをフロアへ配置転換できるだけでもオペレーションの改善につながったという意見が多かったようだ。具体的にはフロアに人員を増やせたことで特にバッシングのスピードがあがり回転率が向上。結果的に客数が増えたことで売上が増えたみたいだね。

それと、特に路面店で展開する飲食店などの多くは近隣住民への騒音や行列による迷惑をすぐにでも解消したいという導入の動機があったようだね。

混雑店は良くも悪くもいろんなお客さんが時間問わず集まってくるからね。近隣店舗やそこに住んでいる人のことを考えればどうしても気になるよね。その場所で長く営業していく以上は近隣住民や店舗との調和がとても大切ということで順番待ちシステムを導入して、来店するお客様には店から離れて待ってもらうか、事前にオンラインで順番待ちしてもらい時間が近くなったら来てもらうなどでなるべく行列を店の前や周辺に作らないように配慮しているお店が多いみたいだね。

頻繁にテレビに取り上げられたりする店なんかは必ずといってよいほど導入しているみたいだね。

また、最近特に増えている動機が消費者への見せ方。一番目立つ店頭に順番待ちシステムの発券機を設置しているだけで「このお店は三密対策にも配慮して感染対策をしっかり行っているから安心」という見せ方ができる点で重宝しているらしいよ。

なるほど。混雑するお店も良いことばかりではないんですね。小さなお店は店内で待てないからどうしても整理券を自動で発行してくれるシステムが必須になるんですね。

そう。最近はコロナの影響で行列自体がタブーになっているからね。店頭に列が少しでもできてしまうとそれこそ周りへの迷惑だけでなく、お店のイメージダウンにつながってしまうということもあるようだね。

「あそこは密だよ!」「危険だよ!」「近づかないほうが良いよ!」ってね。

飲食店は半径2Km圏内の狭域商圏が生命線だから変な噂が近隣で立っちゃったりするともうアウトだからね。

また、最近では特に百貨店や商業施設、ショッピングモールや各種イベントでの利用が増えているようだね。外食業界では従来なら回転寿司や焼肉店が導入する業態として多かったようだけど、カフェやラーメンと業態の幅も広がってきている動きがあるのが時代背景をよく表しているよね。

あとはどんなメリットがあったりしますか?例えば予約システムじゃなくて、順番待ち受付システムじゃないとだめな理由って?予約システムで良くない?って思うのですが、、

良いところに気がついたね。そこが重要なポイント。実は順番待ち受付システムが今、注目されているのはその予約システムとの大きな違いだね。

最近はコロナで事前に席の予約を取る店が増えたみたいだけど、予約システムを導入した店が抱えている課題が無断キャンセル。

予約が入ると、お店側は席と材料も用意しておかないといけないから、売上が厳しいのにキャンセルがあると席だけでなく仕入れた材料まで無駄になってしまうから利益が大きく減ってしまうらしいんだ。それって、お店にとってはかなり痛手だよね。

でも順番待ちシステムって席を確保しない仕組みだから、空いた席から順番に埋めていくことができるからお店にとってはリスクが一切ないんだよね。

予約システムだけしか導入していないときに比べて、席の回転率が桁違いににあがるみたいだね。そこが実は順番待ちシステムを特に売上を伸ばしている大手チェーンが長年使い続けている最大の理由なんだ。

なるほど!そこまでは知らなかったです。どこの飲食店も営業時間を短縮して、ただでさえ席の回転率を上げていきたいのに逆に予約システムによって無駄な席や仕入を生んでしまうジレンマがこれで解消できるんですね!

順番待ちシステムを使うことで利用者側が事前に混み合う時間を避けて来店するからお店にとってもピークタイムを伸ばす効果もあるかもしれませんね。

相当深い!。

まだまだメリットはあるよ。

最近特にメリットとして施設側から挙げられているのは実は集客効果。

これは一部の大手メーカーのシステムだけに限定されるメリットなんだけど、人気店の周りの店って、その立地を有効活用できていないことって本当は多いんだよね。

どういうことですか?言っている意味が。。。??

周りに人気店や大手のチェーン店があったらお客さんがそっちに取られてしまうからその周辺の店舗にとっては良くないことばかりじゃないですか。それを有効活用するって?


普通に考えたらそうだよね(笑)。

そこがその仕組みを考えた会社のすごいところなんだけど、逆転の発想だね。

例えば超人気回転寿司チェーンや行列が絶えない人気焼肉チェーン店が近くにあっても、その周辺の店って実は素通りされたりすることが多いんだよね。

その人気店だけを探してくるから、周りにおしい店があったとしても全く気づかれていない。普通はそうなるよね。

でもその人気店の周辺のお店がその順番待ちシステムを利用する会員の専用のアプリに近隣店舗として表示されたらすどうかな。

人気店だけしか知らなかった利用者が「えっ!こんなお店が近くにあったんだ。知らなかった!」って認知する機会が増えるし、人気店と同じシステムを使っているからり同じ順番待ち予約のプラットフォームだから利用者もスムースに予約しやすいよね。

人気店に登録している会員だからその近隣や周辺住民の大半がそのシステムに会員登録しているという前提が出来上がっているはずだから、そこにピンポイントで自分の店舗の広告を出せるといえば分かりやすいかな。

そんな効率的でピンポイントのターゲットに出せる広告枠なんて他にはまず存在しないよね。しかも広告費はかからないらしいからすごい仕組みだよね。

もともと行こうと思っていた人気店が長蛇の列で数時間待ちなんてことになったら、さすがにディナータイムにも限界はあるから、お客さんとしては待ちきれずに他の店を探しはじめるよね。

そんなときアプリで見て周辺の店舗でも予約ができる、つまり選択肢が表示されたら子供もぐずってきたからこっちに行ってみようかなってなるのが顧客心理だよね。

クーポンなんかも出せる機能があったり、結構人気店の集客力のメリットをうまく近隣店舗も享受できる仕組みをうまく作っているんだよね。

周辺の人気店の集客力をうまく自店舗への集客に活用できる効果を過小評価しているお店って実は結構多いんだよね。

すごい!深い!しかも進化しる!!。順番待ち受付システムって、最近では会員になった利用者にクーポンやDMを送信したりできるとか、リピーターを増やしたい施設にはたまらないプラットフォームなんですね。行列を管理するシステムだけじゃなくていろんな機能が充実しているって聞いてほんと想像以上です。

最近だと、一部のメーカーの機器に限定はされるけど、利用者の順番待ち状況待受画面内にテイクアウト予約のボタンも同時に表示できるとか進化している。相当顧客導線や顧客心理を考えているよね。

順番待ちシステムを導入するのは人気店ばかりだから1時間待ちや2時間待ちもざら。でもこんなに待つなら今日はテイクアウトでも良いや。というお客さんも出てくるはずだよね。そこも逃さないとか。すごすぎ。

今までは「あーこんなに待つんだったら他の店でいいや、今日は外食やめようか」って思って諦めて帰っていたユーザーもテイクアウトに切り替えることができる。

つまり、お店にとっての売上の機会損失を回避できる仕組みを提供しているんだよね。

回転寿司店やラーメンチェーン店で一部導入が進んでいるらしいけど。考えた人マジでやばいよね。

確かイーパークという企業のシステムだったような気がするけど。詳しくは各システム会社に聞いてみて。あの有名な回転寿司チェーンで見た仕組みだったと思う。

メリットはまだあったりするんだけどこの辺にしてデメリットも考えてみよう。あるかな。

順番待ち受付システムのデメリットとは?

これは賛否両論だけど、使い慣れていない店舗から良く聞かれるデメリットは、

「お客が順番待ちを想定していた時間と実際に呼び出した時間にズレが生じることがあってクレームになった」というもの。

ただ、これは店によってクレームにつながる店とそうでない店で明らかな違いがあることが実は明らかになっているんだ。

つまりオペレーションの違い。

お客さんへの事前の伝え方でなんとかなっている店が多いということ。

順番待ち受付システムは席予約ではないということをしっかりと先にお客様にも理解してもらう仕掛けが重要ということだね。

どういうこと?

うん。つまり幅をもたせて時間を伝えておくということが大事だね。

例えばスシローやくら寿司といった順番待ちシステムの最先端を走っている回転寿司チェーンなんかでは

「○時○○分~○時○○分の受付」

という幅をもたせた時間枠で予約を受付ている。時間が前後することがあるというのを予め伝えてリスクヘッジしていたりするんだよね。

呼び出しても無断キャンセルであったり、順番待ち予約だけ入れて他の店に行ってしまうお客さんをずっと待っていたらそれこそちゃんと待ってくれているお客さんに対して大幅に呼び出しの時間がずれてしまうでしょ。

だから呼び出しの際にも「こちらの呼び出しから○○分以内にお越しにならなかった場合は自動的に予約をキャンセルさせていただきます。」という事前告知を予約の際に一緒に伝えていたりするんだよね。知ってた?

それって小さいようで実はお店側にとっては大きなリスクヘッジになっているんだ。

店側もお客様に

「事前にお伝えしておりました通り、お呼び出して●●分お待ちしたのですが、お見えにならなかったものですから。。」とエビデンスに基づいた明確な説明ができるよね。

店舗によっては、遅れてきたお客への救済措置として列の前の方に再配置呼び出ししたりといった高度なオペレーションでトラブルを回避していたりする順番待ちシステムを使いこなしているところも稀にあるよね。神の領域に近いけど。

すごい!。それってつまり、デメリットではなくて、結局店舗側のオペレーション次第でどうにかなるってこと?

勿論全てクリアできるわけではないようだけどね。

大半はオペレーションでクリアできるということ。

そのあたりも長年順番待ちシステムを提供している企業なんかでは、店舗へのアドバイスや運用方法などのコンサルティングも付加価値として持っているようだね。

経験に長けた順番待ちシステムの運用アドバイザー的なスペシャリストが社内にいるらしいよ。

そうじゃないと大手の回転寿司チェーンや焼肉チェーンなんかで順番待ちシステムを10年近くも使い続けさせられないからね。

多分デメリットをあげてきている施設では、導入初期段階で慣れないスタッフが多いことで待ちきれずにそういった声が聞かれたりするんだと思う。

そういった企業では、導入したシステムや仕組みが悪い、合わなかったって決めつけてしまい、利用を諦めたり、顧客ニーズや顧客メリットを無視して、現場が運用しづらいからという理由だけで機能制限してしまうお店もあるようだけどそれは、結果的に顧客満足を下げて来店から足が遠のくといった悪循環を生むサイクルでしかないと思う。

総じて、そういった店舗ではシステムを導入すればそれが全てを解決してくれるとなにか勘違いしていて、現場のオペレーションにまで落とし込むという一番大切なステップを踏んでいないことが多いように思う。

結局システムを使うのは「人」だからね。それは順番待ちシステムに限ったことではないよ。

そういったお店に限って、「DX」だといっていろんな新しいシステムをとりあえず導入して、すぐに「システムが使いづらい」「お客さんは今までのやり方に慣れている」ないろんな主観的な理由を挙げて、企業としても、お店としてもスタッフ自身も進化する努力を止めてしまう。思考停止状態になってしまう。

そうして結局、時間だけが過ぎて、周りのどんどん進化していくお店に取り残され淘汰されてしまうんだよね。

優れた機器ほどしっかり現場が理解して、使い倒さないとね。

なるほど。どんなに優れたシステムも使う側のオペレーション次第でその効果や生み出せる付加価値は全く変わってくるということですね!

そう考えるとデメリットってあんまりなさそうですね。

冷静に考えればコストを投資して導入するわけだから、デメリットを生んでしまうと意味がないですよね。

デメリットを産まないためにどうするか、どう運用していくか。どうシステムにオペレーションをフィットさせていくかという視点で物事を考えることが重要ということですね!

順番待ちシステムって結構深いんですね~。

そうだね。裏を返せばそういったリスクもあるんだということを事前に施設や企業側に事例を踏まえて説明をして、それに対処するためにはこういったやり方があるんですよ。

と丁寧にアドバイスができる、そういった事例やデータをちゃんと示せる企業のシステムを優先的に選定することが重要ということも言えるね。

あと、実はあまり知られてはいないことだけど、順番待ちシステムの業界って、知的財産権の管理が一部の大手企業以外は無法地帯なんだよね。

これは導入側の外食チェーンにもいえることなんだけど、べンチャー企業や外食チェーンが自社開発しているシステムにおいて、既に特許化されている技術を堂々と侵害している事例が結構目につくことが多い。

なぜ特許を保有している企業がそれを黙って見ているのか、実は深い戦略があってのこと想像しているのだけど、明らかに言えるのは、それらの特許侵害の可能性のあるシステムを使っているお店や企業は後々相当なリスクと代償を支払うことになるとということ。

それに気付いていないのか、確信犯でバレなきゃいいやと思ってやっているのかは知らないけど、第三者が外から見て明らかにヤバそうと分かるレベルが結構多いんだよね。。。公開されている情報を調べればすぐに分かることなのに。。

特許庁の公式サイトの先行文献情報を調べずに自社開発を進めてしまい、もう後戻りができなくなってしまっていたり、事前にパテントチェックせずに低価格に目がくらんで安易に導入しちゃったりしてるんだよね、、、知的財産権の侵害に対する損害賠償請求額には上限がないから、後で期間を遡って利用していた年数分の請求をされることになるリスクに気付いていないんだと思う。。。海外の事例を良く学んだほうがいい。

導入した企業側にもリスクがあるということを日本企業も早く気づいてほしいのだが、、

そこがこの順番待ちシステムの知られざるデメリットでもあるし、順番待ちシステム関連特許を保有していない企業のシステムを導入すると後で取り返しのつかないリスクにもつながるなる恐れがあるということを知ってほしい部分でもある。

業界は違うけど、流通業界では、最近大きな特許訴訟があった。ユニクロとアスタリスクの事案。日本国内にもシステム提供企業側と自社開発をする事業会社との事案が可視化されたことで、事の重大さやそれに対する認知も少しづつされてきたようだけど、まだ自分達とは関係はない対岸の火事だと思っている外食企業やシステムベンダーは多い。

知的財産権侵害のリスクや影響範囲については後ほど事例に触れながら解説するけど今回はこのくらいにして。

是非現場での順番待ち受付システム選びの参考にしてみてね。ではまた!

参考:IT・システム分野における特許権侵害訴訟事例

IT・システム分野における特許権侵害訴訟事例

日本国内においてはまだ聞き慣れない特許権侵害訴訟。 米国やEU圏内においてはそれらのニュースを聞かない日はないほど日常茶飯事のように特許訴訟裁判が頻繁に行われてい…